トリプトファンは、体内で作ることが出来ない必須アミノ酸の1つであり、セロトニンは、腸、血小板、脳に存在し、脳内セロトニンは、脳のあらゆる部位に指令を出す神経伝達物質です。
そして、メラトニンは、別名睡眠ホルモンと呼ばれる睡眠に関係した作用を持つホルモンです。
一見、何の関係性もないように思えるトリプトファン、セロトニン、メラトニンですが、この3つの物質には、一体、どのような関係性があるのでしょうか?
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トリプトファンは、セロトニンを作る材料!
トリプトファンは、酵素や筋肉、抗体などを人が生きていく上で欠かせないタンパク質を構成するアミノ酸の1つです。
人の場合、たんぱく質を構成しているアミノ酸は、20種類ありますが、トリプトファンは、体内で作ることが出来ない必須アミノ酸に分類されており、必要量のすべてを、食事から摂取します。
ちなみに、成人の場合、トリプトファンの1日必要摂取量は、体重1kgあたり2mgです。
食事から摂取されたトリプトファンは、小腸から吸収されます。
腸から吸収されたトリプトファンは、生体を構成するたんぱく質として使用される以外に肝臓で代謝され、ビタミンB群の1つであるニコチン酸アミドになります。
さらに、腸から吸収されたトリプトファンのほんの数%は、脳に運ばれ、代謝酵素によって分解され、セロトニンができます。
この脳において、トリプトファンから作られたセロトニンは、神経伝達物質として働き、気分の安定化させたり、睡眠を良くしたり、満腹感を促し過食を抑制したりする効果があります。
セロトニンは、メラトニンを作る材料になる!
トリプトファンから作られたセロトニンは、朝起きて、夜眠るという生体リズムの構築にも関係しており、朝、太陽が昇り、明るくなってくると、セロトニン産生が促され、日中にかけて、大量のセロトニンが作られます。
日中に大量に作られたセロトニンは、交感神経を刺激して、身体が活発に動くことができるようにしてくれます。
夕方、太陽が沈むようになると、セロトニンの産生は低下し、日中に作れたセロトニンは回収され、脳の松果体という部分において、メラトニンに作り変えられます。
メラトニンは、別名「睡眠ホルモン」と呼ばれており、その名の通り、睡眠を促す働きのあるホルモンです。
日中に作らられたセロトニンが多ければ多いほど、夜に分泌されるメラトニンも多くなり、睡眠を促す効果も強くなります。
また、メラトニンは、朝起床してセロトニンの分泌がスタートしてから14時間後に分泌されるというセロトニンとの時間的な関係性もあります。
このセロトニンとメラトニンの時間的関係性が24時間周期の生体リズムを作っており、この関係が不規則な生活によって崩れると、生体リズムに狂いが生じ、朝になっても起きれないとか、目は覚めるけど体が動かないとか、昼夜逆転といった状態が起こってきます。
うつ病や睡眠障害にトリプトファンは効かない?
トリプトファンは、セロトニンをつくる材料になり、そして、トリプトファンから作られたセロトニンはメラトニンになる。
トリプトファンとセロトニンとメラトニンは、切っても切れない見えない糸で結ばれている関係です。
そして、セロトニン不足は、うつ病などを引き起こす原因となりますし、メラトニン不足は睡眠障害や概日リズム障害(24時間の生体リズムが狂った状態)を引き起こす原因となります。
こうしてみてみると、セロトニン、さらには、メラトニンの元になっているトリプトファンが非常に重要に見えますよね。
でも、病気とトリプトファンは、そこまで関係していないとも言われています。
どういうことか?と言いますと、セロトニン不足で起こる代表的な病気のうつ病ですが、うつ病では、確かに、脳内のセロトニンが減少しています。
ですが、うつ病の方にトリプトファンを大量摂取させても脳内のセロトニンは増えなかったという研究結果があります。
なぜか?
それは、うつ病では、トリプトファンからセロトニンを作る酵素の働きが弱くなっていて、トリプトファンからセロトニンを作ることが上手くできていないのです。
つまり、うつ病において、トリプトファンをサプリメントから過剰に摂取しても、症状改善効果はほとんどないということです。
それどころか、トリプトファンの過剰摂取による副作用が起こってくる危険性があります。
気分改善効果や睡眠改善効果を求めて、トリプトファンを過剰に摂取するのはやめましょう。
それよりも、トリプトファンは、食事からの摂取にとどめ、せっかくできたセロトニンを分解させないように酵素の働きをストップさせる作用のあるラフマ葉エキスやセントジョーンズワートを検討する方が良いかと思います。
ただし、セントジョーンズワートは、抗うつ剤など他のお薬と併用注意ですので、既に薬を飲んでおられる方は、主治医の先生と相談されることをお勧めいたします。